竜の唄
「よっしゃ、並んだな。じゃああれだ、前にいる俺じゃなくて真ん中を向け。俺がイケメンなのはわかったから」
「学部長、そろそろ首締め上げますよ」
「すまんレレノア、冗談だ。で、対面したのがお前らのペアだからな。自己紹介でもしておけ」
そんなこちらもまたまぬけなやりとりがあったが、気を取り直して生徒たちは一斉に横を向いた。
イアンもそれにならい、ワクワクしながらペアの相手がいるであろう場所を見やる。
すると、対面した壁際に立った、魔法学部の生徒であろうローブに身を包んだ少女と軽く目が合った。
が、瞬時にぱっと視線をそらされてしまう。
他の生徒たちと同様真ん中に歩み寄ったイアンは、若干俯きながらゆっくり近づいてきた少女に、人見知りなのだろうかと首を傾げた。
とりあえず、これから共に戦うわけだし、とショコラ色の頭を見下ろし、挨拶を交わすため右手を差し出す。
すると、少女は驚いたようにぱっと顔をあげ、やっと真っ直ぐイアンの顔を見た。
鮮やかな紅い瞳が、イアンを射抜く。
「…えっと。イアン=バーンズっていうんだ。よろしくな」
「…ロゼリアーナ=フィオーレ…。よろしくお願いします」
おずおずと差し出された右手を握った彼女は、ぺこりとお辞儀してそう言った。
顔の横でひとつに結われたふわふわした髪が、動きに合わせてひょこひょこ揺れる。