竜の唄
「フィオーレ、さん?」
ロゼリアーナ、フィオーレ。
長いなあ、どうしようか、と、揺れる髪を目で追いながらイアンが考えていると、その思いをくみ取ったのか、ロゼリアーナはまた目線を落として小さく答えた。
「長いから、ロゼでいいわ」
「ロゼ、な。わかった。俺のことはイアンって呼んでくれ! よろしくな、ロゼ」
にこ、と笑って言ったイアンに、ロゼは目を丸くし顔を真っ赤にした。
こちらが話すと、ちゃんと顔を見て聞いてくれるようだ。
そのまま何かもごもご口ごもるので、イアンはまた首を傾げてよく聞こうと少し頭を下げる。
「…えっと…」
「ん?」
「…手…」
「あ、ごめん」
そういえば握ったままだった、とぱっと離すと、ロゼはほっと息をついてその手をローブの中に隠してしまった。
小さかったなあ、と少々名残惜しく思いながら、イアンはその様子を何をするでもなく見守る。
顔を上げたロゼはそれに気づき、また少し白い頬を染めた。
どうやらずいぶんな照れ屋らしい。
「そんな緊張しなくても。大丈夫だって。俺こわい?」
そんなめちゃめちゃでかいとかじゃないと思うんだけどなあ、と的外れなことを言うイアンに、ロゼはおっかなびっくり目を丸くした。
慌てて取り繕うように手を胸の前で振る。
「えっ、そ、そんなことないわ。ごめんなさい、人見知りなだけなの!」
「うん、そんな感じはする」
はは、と笑って言うと、少しの間呆けていたロゼが、やっと少し笑ってくれた。
よかった、何とかなりそうだ、とイアンは心中でほっと胸を撫で下ろす。