竜の唄
「よっしゃ、あらかたお初の対面は終わったな。じゃあ今回の説明会の目的はこれがメインだから、今日はこれで終わりだ。よーく相手を覚えておけよ」
ちょうどイアンとロゼが一息ついたところで、タイミングよくリアスがまた全体に声をかけた。
拡張期を右手に左手は檀上に手をついて、騎士学部の学部長はそのまま言葉を続ける。
「学内演習の実施場所は合同演習場だからな、はじめて行くと思うけどまあ迷わないよう頑張ってくれ。一応配った紙の裏に相手の名前と合同演習場の地図があるから、それ見てまあ忘れんように!」
「あ、ほんとだ、書いてある」
ピラ、と紙を裏返すと、なるほどイアンの紙にはロゼのフルネームと地図が載っている。
ペアであるロゼも同じように確認し、そして大事そうにその紙をポケットに直していた。
「じゃあ解散! せいぜい頑張ってくれたまえ! 初回は明後日だからな!!」
リアスが何やら心底楽しそうな笑顔で言い放ち、クロノがまたも魔法でホールの扉を開け、説明会はこれでお開きとなった。
先頭にいたイアンとロゼは自然とガヤガヤと帰っていく生徒たちの最後尾となり、興奮したのか盛り上がっている彼らの背中を見ながら流れにのっていく。
その去り際、ロゼは一瞬振り返りちらりと檀上を見上げ、何かをじっと見つめた。
その何か―――イヴは、頬をほころばせ彼女を見下ろしている。
「はー、明後日か! 楽しみだな!!」
隣にいたイアンにそう話しかけられ、目線を戻したロゼはそうね、と返してまた少し口元をほころばせた。
―――これが、彼と彼女の出会い。