竜の唄
「ま、イアン君なら大丈夫でしょうよ」
すかさず続けられた言葉に、ロゼは思わず紅茶を吹き出しそうになった。
なんと三十路め、一瞬も待たずにばらしてしまった。
いや、ばらすも何も、そんなんじゃないけど!!
よくわからない弁解を意味もなく心の中だけでするロゼは、大分混乱していた。
恨めし気に睨む少女に気付いているのかいないのか(多分気付いている)、イヴは素知らぬ顔をして茶菓子を頬張っている。
「イアン!? 聞いたことあるぞ!!」
「そりゃあそうでしょうねえ。あの子わりと有名よ? リアスが気にかけてるし」
「そ、そうなの?」
それは知らなかった話だ。
目を丸くしたロゼに、相変わらず疎いわねえ、と茶菓子を口に含んだままイヴは笑った。
リオは知っているのに、と言われたが、リオと自分では環境が違う。
少々ふくれたロゼに気付くことなく、その弟がぽかんと口を開けて呟いた。
「いや、僕が聞いたのは、薬物実験室で爆発を起こしたって話だけど」
「な、何それ」
だんだん彼がわからなくなってきた。
先生が監修している実験で、何故そんなことが起こせるのだ。
そういえば一時実験室が立ち入り禁止になっていることがあったような。
「ま、天才首席ちゃんに見合うだけの実力はあるわよ。剣技はトップクラスですって」
「それでも許さん」
「実力は、って?」
「お勉強が苦手なようね」
仲良くなったら教えてあげたら?とウインクしながら言うイヴに、またまた頬を染めてロゼは全力で頭を横に振っておいた。