竜の唄
一方、ところ変わって、騎士学部の寮。
夕食をいつもと同じようにカルマと食べ終わったイアンは、寮のダイニングルームの暖炉前で、パチパチと爆ぜる火を眺めながら頬杖をつき呆けていた。
それを通りかかったカノンが見つけ、およ、と目を丸くする。
「イアンー? どったの? イアンがじっとしてるなんて、珍しいね?」
「あ、カノン。いや、合同演習が楽しみでさー」
わりと失礼なことを言われたことにも気付かず、にへら、と笑う後輩に、カノンは変なイアン、と不思議そうに首を傾げた。
何だろうなあ、と考えていると、彼の傍にいた男女がカノンに困ったような顔を向けた。
「カノン、イアンが変なんだ。どうしよう」
「これ死なないよな? あたしたちが喧嘩してても止めてくれないイアンなんてはじめてだ!」
そう声をかけてきたのは、四学年の男子生徒のティムと、女子生徒のナリアだ。
この二人、本人が言うようによく喧嘩をこの暖炉前でしているのだが、今回はさすがに様子がおかしい友にそんな場合ではなくなったようだ。
いつものように喧嘩していたのだが、その場にいるのに二人に何の反応も示さなかったイアンに心底心配になったらしい。
「イアンが変なのはいつものことだけどねー?」
「もっと変なんだよ! なんつーかこう…変だ!!」
「実習が楽しみなのかなと思ったけど、そしたらいつもカルマさんと馬鹿みたいに打ち合ってるじゃん?」
散々な言い様だが、一大事だとばかりにまくしたてる二人にカノンはんー、と困り果ててしまい唸った。
当の本人はといえば、一体何を考えているのか、ぼんやりしたまま。
…うん、いつも以上に、変だ。
なんだろなあ、と三人で首を傾げていると、通りかかったカルマが呆れたように声をかけてきた。