竜の唄
「お前らまだそこにいたのか? あと、馬鹿は余計だ」
そう言う本を抱えてお勉強モードの彼に、三人はわっと飛びついた。
うわ、と驚いたカルマは、筆頭としてしがみついてきたカノンに苦い顔を向ける。
「おいカノン、やめろ。同じ顔がくっついてると変な気分だぜ」
「カルマ~! イアンが変だよ! どうにかしてよ首席!!」
「首席は関係ないだろ! ていうか、ほっとけば治るって。誰だってあるだろ、そんなことくらい」
「イアンは今までなかったぜ!?」
「それはお前らが勝手にそう思ってるだけだ!!」
ほらどいたどいた!と払われてしまい、三人はぺいっと床に放り出された。
冷たい、とシクシク泣き出したカノンと足を踏んだとかで結局喧嘩しだしたナリアとティムを放置し、カルマは件のイアンをひょいと上から覗き込む。
「イアン、お前今日はめずらしく暖炉でまったりか?」
「カルマ。んー、まあな。別にどうってわけではないから」
「飯食ってるときもそんなんだったな。まあ無理はすんなよ」
うん、としっかり返事したイアンに安心したのか、カルマはそれだけ言うと図書館から借りてきたらしい本を抱え直し、自分の部屋に去ってしまった。
ちぇ、イアンにだけ優しい、と拗ねたカノンに、当のイアンは苦笑を返す。
「いい兄ちゃんだよな」
「あたしにとっては弟だけどね~」
「あ、そうか。そうだった」
「ちょっとイアン、どういうこと~?」
むすっとふくれてみせたカノンに、ごめんごめん、とイアンは笑った。
それで安心したのか、まあ何かあったらお姉さんに言いなさいな!と胸をたたいて誇らしげに言い、カノンも自分の部屋へと帰っていく。