竜の唄
蒼い頭を二つ見送って、少し嬉しそうに目を細めたイアンは、次に振り返った先で喧嘩している二人に気が付いた。
またやってる、と呆れたように呟いて、体をひねってソファ越しに声をかける。
「ナリア、ティム、お前らそこらへんにしとけよ」
「はっ! あたしらの喧嘩をイアンが止めた!!」
「本当だ! やったぜイアン戻ってきたんだなお前ー!」
「戻ってきたって。何だそれ」
今度は喜びを分かち合う二人に、相変わらず仲いいなあ、とイアンはほっこり微笑んだ。
違う、仲よくない、と声を揃えて言うもんだから、これまたおかしい。
「そういえばイアン、合同演習のペア、あの天才首席ちゃんらしいな」
「ん? ロゼのことか?」
「そうそう、なんかそんな名前だった! お前大丈夫かよ?」
もしかしてそれでおかしかったのか!?と慌てるティムに、イアンははてと首を傾げた。
大丈夫かとは、どういうことだろうか。
「ロゼとペアだと何か問題でもあるのか?」
「問題っていうか、ほら。お高くとまった首席ちゃんって感じらしいから。仲良くやれんのかって思ってよ」
「そうか? 確かに気難しそうではあるけど、イアンだったらいける気もするけどな」
ティムが短い金髪頭を掻きながら心配し、ナリアはそんな心配無用だとでも言うように、何故か彼女が仁王立ちして自信ありげに言った。
…お高くとまった首席ちゃん。
そうか、そんな風に言われてるのか、と、イアンは昼間の少しおどおどした態度に納得したような気がした。