竜の唄
「大丈夫だって。きっと仲良くなれると思う。ちょっと打ち解けたし」
「えっ、まじで!? すげえなお前!」
「笑うとかわいいよ」
「「えっ」」
ソファにもたれたままいい笑顔で言ったイアンに、二人の友は驚き固まった。
その様子に気付いているのかいないのか、壁にかかった時計を見ると、もうこんな時間か、と呟くイアン。
「俺もうシャワー浴びて寝よっかな」
「…はっ、おいイアン、課題は?」
「…土日にするよ」
よい子は寝る時間だ、と告げ、ソファから立ち上がったイアンは伸びをした。
そのままひらひら、と手を振り、カルマの隣室の自分の部屋へと帰る。
歩きながら思い出すのは、紅い鮮やかな、あの瞳。
「…そうだなあ、もっと仲良くなれたらいいな」
何やらご機嫌な様子で帰って行ったイアンに、彼を見送ったナリアとティムは思わず顔を見合わせた。
喧嘩していたことなんて、もうすっかりさっぱり明日の彼方である。
「…あの子、笑うんだな」
「…イアンが女の子をかわいいって言った」
驚愕を受けた内容は違うにしろ、あまりのことにしばらく二人はそこで固まっていたとか。
それを上機嫌でシャワーを浴びていたイアンは、知る由もない。