竜の唄
「い、イアン!」
「おはよ」
声をかけてきたのはペアであるイアンだった。
イヴのあの態度に納得がいき、ロゼはぐぬぬと顔を真っ赤にする。
「? ロゼ?」
「あっ、お、おはよう」
不思議そうに名を呼ばれて、はっと気を取り直したロゼは慌てて挨拶を返した。
おう、と頬を崩したイアンに安心していると、彼の後ろに彼を指差す友人らしき男女を見る。
「…イアン、あの、お友達はいいの?」
こっちを見てるけど、と少し恥ずかしくなって問うと、彼らを振り返ったイアンはああ、と苦笑いした。
「また痴話喧嘩に巻き込まれそうだったから逃げてきた」
「ち、痴話喧嘩?」
「おう、そんなん言ったらまた違うって言われるだろうけど」
よくわからないが、放っておいていいらしい。
一緒に行こう、と紙に記された演習場を指差され、頷くしかできなかったロゼはよかったとはにかむイアンにまた耳まで赤くした。
こんなに弟以外の男の子と話すのなんてはじめてで、正直どうしたらいいかわからない。