竜の唄

そうやって緊張しているロゼに気付いているのかいないのか、やたらと嬉しそうに歩くイアン。

彼は先程まで彼女といた女性を思い出し、そういえば、と首を傾げた。



「副学部長と仲いいのか?」



イアンにそう問われ、ロゼは目を白黒させた。

ああ、イヴのことか、と聞きなれない単語にドギマギしつつ、うーん、と唸る。



「仲がいいというか、気にはかけてもらってる…のかしら」

「ふーん? それってすごいんじゃないか?」

「そ、そう…? でも、イアンも学部長に気にかけてもらってるって聞いたわ」



大体自分の場合、イヴとは副学部長と生徒、という関係だけではない。

話をそらそうとイアンのことに言及すると、まんまと引っかかったイアンはああ、と嬉しそうに笑った。



「でも俺のは、先生が俺をここに連れてきてくれたからでさ」

「えっ、そうなの?」

「おう! 最初はめっちゃ抵抗したけどなー」



若かった、と笑うイアンに、ロゼはふむと考えこれくらいならいいかしら、と自分もなのだと告げた。

きょとんとする彼に、自分もイヴに誘われここに来たと噛み砕いて話す。



「えっ、そうなのか!」

「うん。弟も一緒に」

「弟? 弟いるんだ」

「一個下に。…色々問題ありなんだけど」



度が過ぎたシスコンを思い出し、ロゼははあとため息をついた。

事情を知らないイアンはよくわからないままに兄弟いいなあとにこにこしている。


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