竜の唄
「イアンは兄弟はいないの?」
「うん、一人っ子だ」
そんな話をしていると、いつのまにか演習場についていた。
大きな扉を開き、これまただだっ広い場所にたどり着いた二人は、真っ直ぐ歩いた先に見える檀上に見慣れた人物を見つける。
「リアス先生だ」
「イヴ、…先生も」
「あっちに集まるみたいだな」
既にちらほら生徒の姿が見える。
なんとなくあの壇の周辺に集っているようだ。
二人で芝生を踏みしめそちらに向かうと、話し込んでいたリアスとイヴが一瞬にやりとこちらを向いた。
「…またあやしい顔してる」
「…なんかムカつくわ」
苦笑いするイアンと頬を引きつらせるロゼ。
ちょうど二人が来たのは生徒たちが来る時間のピークだったようで、続々と人が増えていく。
そうして時間になり、チャイムが鳴り響き、リアスが檀上でまた拡声器を持って立ち上がった。
「よし、時間だ! これから合同学内演習を行う!!」
キーン、と勢いよく鳴った拡声器に、生徒の大多数が耳を押さえた。
おっと、と拡声器から少し距離をとり、すまんすまんとリアスは苦笑する。
「ペアとはもういるか? いなかったら見つけろ! そんで前と同じ並びで列になってくれ」
そう告げられ、イアンとロゼは必然的に一番前へ。
イヴが檀上からにこにこにこにこ、ロゼを見下ろしている。
ムッ、と顔をしかめ、ロゼはぷいとそっぽを向いた。
それに不思議そうな顔をしつつ、イアンは相変わらず緊張感のかけらもないリアスを見上げ話の続きを待つ。