竜の唄
「それでは、はじめッ!」
レレノアの鋭い声を合図に、戦いの火蓋が切って落とされる。
真っ先に動いたイアンに、標的にされたノイドもすぐさま気が付き簡単な魔法で対処した。
球になった雷撃が、イアンに向かって真正面から飛んでくる。
「やっぱり魔術師から狙うのね」
「単純すぎて動き読まれてら」
呆れたように零したイヴとリアスが頬杖をついて見守る中、当のイアンはというと雷撃を横に逸れて回避しそのままノイドに突っ切っていた。
が、完璧にコントロールされた球体はイアンの後ろをピッタリついていき、さらにノイドは数も増やす。
「うおっすげえ!」
「か、感心してる場合じゃないから!」
カノンから放たれた弓矢を火の玉で打ち落とすロゼは、そう言いながら足元に魔法陣を出した。
途端に矢を撃つのをやめたカノンは、こちらも単純な魔法で対応しようと水球をロゼに向かって放つ。
が、ロゼが繰り出した魔法は、カノンではなく高く跳びあがったイアンに向けたものだった。
「はい押さえた!」
上から飛びついて前からの雷撃を木でできた剣でいなしてかわし、見事に相手の首筋に剣を宛がったイアンは、後ろでできた土の壁に雷弾がぶつかる音を聴きにっこりと微笑んだ。
悔しそうに歯を食いしばるノイドが見た先では、ペアの水球も同じようにロゼの前に出現した土の壁に阻まれている。
「ロゼは頭いいな~」
感心しつつノイドからどいたイアンは、次の瞬間にはカノンに向かって駆け出していた。
その足の速さに魔法学部の少年は目をひん剥く。
「俺らの勝ち!」
高らかに宣言したイアンは、抜け目なくカノンの腕を後ろに捻りきっちり拘束していた。