竜の唄
学生たちの休日
長い一週間が演習で締めくくられ、皆が多種多様の思いを抱えた、その週末。
学生たちが友人や恋人とこぞって街へと繰り出し、城下町で店を練り歩くつかの間の休日。
演習でコツを掴み、気分的には上々であったロゼはというと、やはりというかなんというか、弟と育て親と共にいつもの部屋で休日を過ごしていた。
遊び盛りの多感な時期、の筈が、今は机に向かって一直線。
「姉ちゃん~」
「なに? 今課題してるの。黙ってて」
「なら部屋でやれよ~」
「アンタが無理矢理ここに連れてきたんでしょ!」
「かわいい弟が! お茶に誘っているというのに! ここまで来て課題かよ!!」
「今更よ、リオ」
恨みがましく姉を睨むリオに、イヴがお手製マーマレードを口にしながら諦めろと諭した。
悔しそうに今度は課題を睨むリオ、何を考えているのかが手に取るようにわかる。
今にもマーマレードを握りつぶしそうな勢いだ。
「はーあ。演習終わった姉ちゃんはなんかウキウキしてるし。そんなにそのイアン君といれて嬉しかったのかよ」
「…うるさい、違うわよ」
「今の間はなんだ!!」
「もう、やっぱり部屋に帰る」
「嫌だダメだ」
とんだシスコンである。
二人とも年頃の筈なのに、育て方を間違えたんだろうか。
イヴはこっそりとため息をついた。
一緒にいれるのは嬉しいけども、親心的には複雑である。