竜の唄
「イヴ~姉ちゃんが冷たい」
「リオはお姉ちゃん大好きねえ…」
「姉ちゃんは渡さん」
「あらそう…、なら私は?」
ちゃっかりここで自分のことを挟むイヴに、今度はロゼがため息をついた。
後ろでイヴも渡さん!とかなんとか叫んでいる弟の声が響いている。
イヴもイヴで相当な親馬鹿だ。
とてつもなく嬉しそうに、頬に手を宛ててあらら~とにこにこしている。
あれは本気でうれしいに違いない。
「やだ~リオったら! かんわいいんだから~!!」
「むぐッ」
「ちょっと将来が心配だけど許しちゃう!! そのままでいて~!!!」
イヴが飛びついた勢いでマーマレードを喉に詰まらせたリオが、助けを求めるべくこちらを見たのか視線を感じたが流しておいた。
私はマトモでいてやるんだから!!
「それにしてもロゼ、もうずっとその状態じゃないの。そろそろ休憩したら?」
リオを抱きしめたままそう話を振ってきたイヴ。
そろそろ集中力が切れてきていたロゼは、ふう、と息を吐いて振り返った。
視線の先には、疲れた頭にはとても魅力的に思える、美味しそうな洋菓子。
「…そうするわ」
いそいそとテーブルにやってきたロゼに、イヴは満足そうににっこり微笑んだ。