竜の唄
テーブルにはあっさりめのホットレモンティーに、甘い甘いマーマレード。
マーマレードの小脇には、色とりどりのキャンディが詰まった可愛らしいビンも置いてある。
温かい紅茶にホッと一息ついて、ロゼは存分にそれらを堪能した。
三人で他愛もない話をゆっくりとする。
その中で話題として出てくるのは、やっぱり演習の話。
「それにしてもロゼとイアン君のペアは凄かったわ」
「そいつは気に食わないけど、姉ちゃんがすごいのは当たり前だ!」
「ねえ、イアンのあの飛ぶ斬撃ってなんだったの?」
「あれは風魔法と連携してるみたいよ」
「……」
「今あの子がそんなことできるのかって顔したわね」
不覚にも本当にそう思ってしまったロゼは、心の中でペアの相手に謝った。
イアンの話が出て、リオは心底面白くなさそうだ。
「そんなもんもできないようなヤツなのかよ」
「こらこら。学部が違うでしょう?」
「ふんっ」
「まあそれもリアスが教えて何となくでって感じらしいけど…」
「……」
イアンには魔法で緊急対処、みたいなことは期待しない方がよさそうだ。
普通騎士というものは、剣と簡単な魔法を駆使して戦うものなのだが、演習でイアンには飛ぶ斬撃以外その傾向がほぼ見られなかった。
カノンだって水魔法を撃ち込んできたのに、彼は何でも剣や足技で力任せにしようとする。
ロゼはあの演習でペアについてそんな分析をして、そしてやっぱり頭を使うのは苦手そうだという感想を抱いた。