竜の唄
イアンの話が出て不機嫌になったリオを本の話で宥め、しばらくのんびりと雑談していたロゼたち。
魔法についての話になり、リオが嬉しそうに雷魔法の素晴らしさについて語っていたとき、何度目かの紅茶を注ごうとしたイヴがはたりと動きを止めた。
「あら」
「ん?」
「お茶がなくなったわ」
作らなくちゃ、と立ち上がって戸棚に向かったイヴは、一通りそこを漁ってから、しまったと顔をしかめる。
「紅茶の葉、これでおしまいなんだった…」
「なら僕部屋からとってくるよ。 あと次は抹茶ラテも飲みたい!」
「うーん。…いいえ、いいわ。リオ、ロゼ、買ってきてちょうだい」
「え?」
くるりと振り返ったイヴは、そう言ってツカツカと仕事を行うデスクへ向かい、鍵のついた引出しから財布を取り出すと、一枚のお札をロゼに手渡した。
そういうこと、と納得したロゼに、察しがいいわねとイヴは微笑む。
「二人でお遣い、お願いね♪」
「やった!! 姉ちゃんとデートだー!!」
「ちょっとデートとか言わないでよ…」
普通に出かけるとか言ってほしい。
そうしてあんまり乗り気でないロゼに気付いたのか、イヴはここでもう一言付け足した。
「余ったお金で好きなもの買ってきなさい」
一瞬にしてお出かけコースに書店が追加される。
言わずもがな、と目を合わせて、姉弟は頷き合った。
「じゃあ言ってくるわ。ありがとうイヴ」
「いってきまーす!」
「うふふ、いってらっしゃい」
たまには学生らしく過ごしなさいな。
二人には聞こえないように囁いて、さてと、とイヴはその場の片付けにかかった。
わざと買って来なかったことは、ロゼとリオには秘密だ。