竜の唄
「ふふ、フィオーレ君はお姉さんとお出かけ?」
「はい! 姉ちゃん美人でしょ!」
「ちょ、ちょっとリオ、いきなり変なこと言わないでよ」
ことあるごとにこうやって紹介してくるリオに、恥ずかしいやら何やらでロゼは真っ赤になった。
本当ね、と優しく目を細めたフローラ先生は、ロゼに向かってその微笑みを向ける。
「こんにちは。弟さんのクラスの副担任をさせていただいてます」
「こ、こんにちは…っ」
「照れ屋さんなのかしら? お出掛けするのはいいけど、気をつけてね」
それだけ言ってじゃあね、と手を振ってフローラは先へと進んでいった。
リオも彼女に魅入られている男子生徒の一員らしく、嬉しそうにその背中を見送りロゼに笑顔を向ける。
あら珍しい、と少し驚き、そして何故だか寂しいような複雑な気持ちになったロゼだったが、
「フローラ先生てなんか姉ちゃんに似てると思うんだ!!」
この一言にそんな気持ちは一気に萎んでいった。
本当にこの世紀のシスコン、どうにかならないだろうか。
「…行くわよ」
何を言う気にもなれず、ロゼはそれだけ告げてさっさとその場を去った。
待ってー、と追いかけてくる弟が、悔しいかなちょっとかわいい。