竜の唄
「騎士学部の学部長だ!」
「り、リアス先生」
イヴとリアスに交流があるのは知っていたが、こうして私室で二人でいるところを見るのは姉弟ははじめてだった。
イヴは姉弟との時間には、基本的に誰も部屋の中へは入れない。
そんな育て親は今仕事机の椅子に座り、リアスはその隣に立ち、何というか、何だか親しげな様子。
叫んだ後に若干リオがムッとしたのを察して、ロゼは口元を少し引きつらせた。
「おうおう、元気だな弟の方は。そんな警戒せんでも。二人でおつかいだって?」
睨むリオに気付いているのかいないのか、リアスはのんきに笑って彼の腕に抱えられた紙袋を指差す。
イヴはというと、何が面白いのか心なしかいつものニコニコ笑顔の中ににやけが混ざっている気がする。
そうしてそんな観察をしていたロゼは、リアスの問いに対しての弟の返事が手に取るようにわかり、
「デートです」
「違う」
間髪入れずに否定した。
「んん…? まあ触れないことにしておこう」
何となく察してそっとしておくことにしてくれたリアスに、姉は心から感謝した。
せめてそういう発言を家族内だけにしてくれればいいものを。
「早かったのねぇ」
「そうかなぁ。僕たち本屋でめちゃくちゃウロウロしたけど」
少しリアスを気にしながらも、ロゼははいお金、とイヴにおつりを差し出す。
別にそのままお小遣いにしていいのに、と笑う彼女に、それでも押し付けた。
どのみち、あまり本以外に使い道はないのだ。
あまり甘えすぎるのもよくない、とロゼは考えている。
そして、その一連の様子を見ていたリアスは、そういえば、と顎に手を宛がい、イヴの手元を見ながらふむと唸った。