竜の唄

「本屋か。本屋に行ったなら、郵便局の方向だよな。イアンを見なかったか?」

「えっ」



何故そんなことを聞くのか、というか何故わかるのだ。



ロゼは焦って、そして彼のことを思い出し少し頬を染めた。


その様子に確信したのか、やっぱり、とリアスは苦笑する。




「入れ違っちまったな。ついでに俺の郵便も頼もうと思ってたのに」

「え、ちょい待ち。姉ちゃん、まじでそいつ見たのかよ?」



くるりと振り返ったリオの形相といったら。



ロゼは諦めて頷き、まさにその郵便局にいた、と告げた。

イヴが銀髪を巻き込みながら頬杖をつき、面白そうに育て子の様子を見ている。


もちろん目線は、弟の方へ。




「聞いてねえ! なんで言ってくんないんだよ、姉ちゃん!!」



案の定吠えだした彼に、即座に姉も反論した。




「だってアンタ、そんなこと言ったら絶対イアンにつっかかるでしょ!」

「あったりまえだろ! 面借りて路地裏に引っ張り出す」

「やめてってば!!」



わあわあ騒ぎ出した姉弟に、リアスは目を丸くした。

ロゼがこんなに大きな声で、はっきりと喋って騒ぐとは思わなかったらしい。


こっそりイヴに目くばせしてそのことを伝えれば、彼女は苦笑だけを返してきた。


どうやらロゼの引っ込み思案と人見知りは、なかなかに大変なものらしい。



その後もめずらしそうに姉弟の喧嘩ともいえない言い合いを眺めていたリアスだったが、そのうちに飽きたのかイヴのデスクに凭れ掛かりうーん、と思案をはじめた。

その様子に部屋の主は意地の悪い顔をして残念だったわね、と告げる。


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