竜の唄
「そうだなあ。こりゃ自分で行くかな。参った、めんどくせえ」
「つまり教え子をパシろうとしてた訳ね」
「おいおいイヴ、言いがかりはよせ。お前と同じお遣いだ」
めんどくせえと言った口で何を言うか。
イアン君もこんな師匠を持って大変ねえ、なんてイヴが心中で思っていると、やっと言い合いを終えた姉弟がまたこちらを向いて、二人揃って首を傾げていた。
あらやだかわいい、写真写真、とか机を漁ったイヴはやはり正真正銘の親馬鹿だ。
「あの、が、学園の郵便局じゃダメなんですか?」
喧嘩したりしているうちに少しリアスの存在に慣れたらしいロゼは、ちょっとどもりつつも、そういえばイアンも、と不思議そうな顔をした。
この学園には大人数の生徒がおり、さらにそれに対応する教師もおり、そのみなが王都に住む者以外は寮に住んでいる。
そのためあまり学生がむやみに外に出たり不便がないようにと、学内施設として郵便局がちゃんと存在しているのだ。
「あー、俺とイアンの故郷はかなり遠いもんでな。ちょっと学内のじゃ配達してくれないんだ」
「へー…?」
そんなこともあるものなのか。
イヴのお遣い以外に郵便局というものを使ったことがないロゼとリオは、揃って感心したように声をもらした。
またそれがツボだったらしく、イヴが密かにかわいいかわいいと悶えている。
大丈夫かこの親。
リアスもそう思ったらしく、ちょっと引き気味にイヴを見てから、二人に向き直って苦笑した。