竜の唄
「うーん、イヴよ。弟さんはこれは少し問題ありなんじゃないか?」
さすがにここまでくると心配になってきたリアスが言うと、イヴはしれっと何でもないように、
「わかってるわよ。でもかわいいんだもの」
と、無責任にそれだけ言った。
その返答にリアスは口元を引きつらせる。
「…甘すぎるのはよくないぞ」
結局彼はそれだけ言うに留めた。
以前彼女と話しているときも溺愛しているとは感じていたが、まさかここまでとは。
「お前があのシスコンのベースなんじゃないか…?」
「なあに?」
「…いや、何でもない」
血は繋がっていなくとも、やはり似るところは似るものである。
しみじみとそんなことを思いながらも、リアスは少し思い当たる節があり口元に笑みを浮かべた。
「アイツらもそうだもんなあ」
「だからなによ?」
「何でもねえよ」
そんじゃ俺はそろそろ行くわ、とデスクから離れ告げる。
あらそう、と素っ気なく返したイヴの目線は、ずっと姉弟に向けられたまま。
その様子に苦笑しつつ、リアスはその場を離れる。
「あ、リアス先生、帰るんですか?」
「おう、まあ郵便局に行くんだけどな。イアンとよろしくしてやってくれな、フィオーレよ」
「ダメだっつってんだろー!!!」
また弟に火をつけてしまったが、イヴが楽しんでいるようなのでよしとしよう。
無責任に火種だけ撒いて去ったリアスに、ロゼが顔を真っ赤にしつつ何故か少し唸り、リオは相変わらず吠え続け、イヴはにこにことその様子を傍観していた。
後ろ手に部屋の中を見ながらぱたん、とドアを閉めたリアスは、それでも聞こえる三人の声に面白おかしそうにくつくつと笑う。
楽しく家族しているのなら、よかった。
表面的な話を聞くだけであまり詳しいことは知らなかったが、あの様子だと大丈夫そうだ。