竜の唄
そんな話をしているとあっという間に3分が過ぎ、レレノアとイヴら教師陣が次々と現れた。
学外へと出ることになるこの実習は、副学部長たちが引率すると聞いている。
すっかり演習では見なくなっていたお偉い面子に、カノンがそれっぽくなってきたねえと嬉しそうに囁いた。
「全員揃っているか?」
レレノアがハスキーボイスを轟かせ、確認をとる。
見回るついでにカノンとロゼを引きはがした彼女は、整列を命じて門へと歩み寄った。
「今回は合同では初めての学外演習だ。気持ちが昂るのはわかるが、無鉄砲なことをしてバカをするなよ」
リアスの時のゆるゆるとした空気とはえらい違いだ、なんて感想を抱いていたロゼの横で、イアンがぎくりと体を強張らせた。
自覚があるだけまだましである。
「今日は実際に来ている排除依頼をこなしてもらう。最近王都の周りで野生の魔物が増えているのは知っているな?」
少し間をとって生徒たちの顔を確認するように見回した彼女は、不思議そうな顔をしたイアンに目をとめ少し眉を寄せた。
が、無視をすることに決めたらしい。
さっさと話を進めていく。
「具体的な数の指定などはない。倒せるだけ倒してしまえ。だが無理は禁物だ。十分だと思ったらさっさと退くこと。撤退という戦略も忘れるな」
めっちゃこっち見てる、とイアンは思わず冷や汗をたらした。
間違いなくかなり自分に向けて言っている。
肩身の狭い思いをしながら、思わずイアンはごくりと唾を飲んだ。
絶対にレレノアを怒らせてはいけない。
こわい。
そんないち生徒の気を知ってか知らずか、きびきびと説明を終わらせたレレノアは、よし、と頷くと門の外へ顔を向け東を指差す。
「これから集団で王都郊外の荒野へ向かう。どうもその先の森で魔物が増えているらしい。森へ行くのもいいが、不安があるようなら荒野でとどめておけ」
では今から向かう、と彼女が高らかに告げると同時に、門番の手によって街への道が開かれた。