竜の唄
放たれた門の外、街の外れを列を成して歩いていく。
先頭を歩くレレノアとイヴの背中を見ながら、イアンはこっそり呟いた。
「レレノア先生、絶対俺のこと言ってた」
「…目、つけられてるものね」
これまでの演習でイアンの無鉄砲さをかなり見せつけられていたロゼは、レレノアの気持ちがとてもよくわかる。
これは放っておいては危ない。
人見知りの自分のために人当りのいいイアンが選ばれた、と思っていたが、もしかすると彼の手綱を握れという意味もあるのかもしれない。
「でもさ、結局、一回も負傷なしで済んだのはイアンたちだけだったよねえ」
イアンとロゼのすぐ後ろを歩くカノンは、その回避スキルわけてほし~、と唇を尖らせた。
その横を歩く彼女のペアであるノイドが、ふんと鼻を鳴らしてイアンを睨みつける。
「野生の勘がよく働くようだな」
皮肉たっぷりに言われたそれに、イアンは苦笑いだけ返した。
何度もこのペアでやりあったが、結局カノンとノイドのペアがイアンとロゼに勝てたことは一度もなかった。
そのせいか、彼は以前から敵対視していたロゼばかりでなく、イアンにまでも対抗心を燃やすようになってしまっている。
「ロゼちゃんが守ってるのもあるけどねえ」
「それは僕が気がつかないと言いたいのか」
「違うよ~、怒んないでよも~」
ノイドは凄いもん、なんておだてるカノン。
どちらも個が強いが、なんだかんだ言って上手くいっているのがこのペアだ。
相性が悪そうだと思っていただけに、不思議なものである。
「確かに、ロゼには助けてもらいっぱなしだなあ」
二人の言葉にイアンがしみじみと言えば、隣で歩いていたロゼはぎょっとしてぶんぶん胸の前で手を振った。
「そ、そんなことないわ。それに、こ、後衛の役目だから」
褒められて恥ずかしくなったのか、しどろもどろになって言ったロゼに、イアンは思わずふふっと笑った。
それにまた顔を赤くする、照れ屋な少女。