竜の唄
そうして夕食をたらふくたいらげて、膨れたお腹を抱えながら、次にイアンとカルマは校舎と寮の間に位置する鍛錬場に向かった。
放課後、日も落ちて暗い中、人の少ないがらっとした鍛錬場で、週に数回二人は自主練をする。
「試験前はこれできないからなー。今のうちに手合せ頼むぜ!」
「おうよ! でも、うへ、ちょっと食べ過ぎたぜ…」
「そのうちそんなモン気にならなくなるっての!」
やる気満々のイアンは剣を手に、お腹をさすりさすり苦しそうなカルマは槍を手に、鍛錬場の一角で対峙した。
コイツ俺より食べたはずなのにピンピンしてやがる、とカルマは恨めし気に後輩を見やる。
「お前はほんと、胃袋宇宙にでもつながってんじゃねえの?」
「はは、よく言われる! っしゃあ、行くぜ!」
「はいはい! お願いしまっす!」
「しまーす!!」
手合せ前の挨拶を交わし、二人は一斉に土で固められた地面を蹴った。
まずイアンが高く飛び、カルマの頭目がけて剣を勢いよく振り下ろす。
それを柄の部分で受け止め、イアンの勢いを利用して弾くように槍を振り、咄嗟に剣と槍の接触部分を押して後ろに跳んでかわしたイアンに、次はカルマから槍頭の刃を向け斬り込んだ。
それを剣の刃部分で受け止め、押し返すとイアンは蹴り技をカルマの腹を狙って出す。
しかし素早く出された踵は、またも槍の柄によって阻まれた。