竜の唄
そうしてぞろぞろと連れだって歩いて行くうちに、市街地の見える場所まで辿り着いた。
あと少し歩けば、王都の外だ。
立ち並ぶ店の屋根を眺めて歩いていたイアンは、ふとこの間のことを思い出して渋い顔をした。
「どうしたの、イアン」
気付いて声をかけたロゼに、イアンはいや、とその表情のまま商店街を指差す。
「こないだリアス先生にパシられそうになったの思い出して…」
「…ああ…。その日、多分私、リアス先生に会ってる」
「え、そうなのか? 何で?」
「あ、えっと、用事があってイヴ先生の部屋に行ったら、いらっしゃったの」
しまった、と焦りつつ言えば、ふうん、とイアンは特に追求するでもなく、首席は大変なんだな、と感心した。
嘘は言っていない、とはわかっているが、何となく心が痛むロゼ。
「あ、そういえば、その時に先生もイアンもニベリア出身だって聞いたわ」
違う話題を、と思って出たのは、あの日彼と話したことだった。
へえ、そんなこと話したのか、と故郷の話に少し表情を輝かせたペアに、ロゼは頷いて遠いんだってね、と話を続ける。
「うん、だから長期休暇くらいにしか帰ってない」
「先生と帰るの?」
「まちまちかな。去年は一緒に帰ったんだけど、二人して向こうの駅で車掌さんに起こされたよ」
先生に起こせよって理不尽に怒られたなあ、としみじみ語るイアンに、ロゼはクスクス笑った。
二人の話を聞いていると、本当に仲がいいんだなあ、となんだか微笑ましくなる。