竜の唄
目を向けた先では、女性教師が立ち止まり腰に手を宛がい、生徒たちを振り返っていた。
背後にある王都と荒野を隔てる高い門は、件の魔物が侵入しないようにするためか、厳重に騎士に護られている。
「ここからはペアで自由に行動しろ。一応私たち教師も退治はしないが巡回する」
そう告げてピッと立てた親指で後ろを差したレレノアは、次に同じく同行している教師達に目で合図を送った。
彼らがごそごそしている中、話から逃れられたロゼは、こっそりほっと息をつく。
「緊急時はこの発煙筒で知らせろ。誰かが駆けつける」
ほら、と配られた赤い筒を受け取り、イアンはそれをしげしげと眺めた。
が、誤って作動してしまってはいけない、とロゼが横から取り上げる。
「イアンは動き回るから、私が預かっておくわ」
「ん? そっか、わかった」
あっさり言い包められたイアンは、荒野をぐるっと見渡してまたレレノアに視線を戻した。
彼女はというと、同じく荒野を観察していたらしく背中を向けていたが、振り返って生徒たちにまた注意を呼びかける。
「森の方はさっきも言ったが魔物の数が多い。私たちも気を付けるが、発煙筒も見にくいだろうからな。行くなら気をつけろ」
どうせお前は行くんだろうよ、という目をレレノアに向けられ、イアンは苦笑いした。
自分ひとりだったら行ってるだろうけど、と、ちらりとロゼに目をやる。
「十分だと思ったらこの門の傍に戻ってこい。一応陽が傾いてきたら終了だ」
戻ってこなかったらペナルティな、と淡々と告げた彼女の言葉に、主にイアンとカノンが顔をしかめた。
どうやら何度か彼女のペナルティとかいうものを経験しているようだ。
「それでは、はじめ! 健闘を祈る!」
レレノアがそう高らかに告げ、後ろで門が開かれる。
生徒たちは一斉に散らばった。