竜の唄
最初の5体の魔物を倒し、その後も次々と現れる魔物を二人は淡々と倒していった。
同じ魔物ならば、大体同じパターンで倒していける。
森には入らずにその傍で戦っていたが、オオカミの魔物以外はたまに植物型がまぎれているくらいであまり姿は見られなかった。
やはりあの魔物の大量発生が問題とみて間違いないようだ。
「少し落ち着いたかな」
飛びかかってきたオオカミの魔物を切り捨て、周りに敵がいなくなったのを確認したイアンが、剣を一振りして血を飛ばして言った。
そうね、と返したロゼは、息ひとつ乱れていないイアンの底なしの体力に内心舌を巻く。
相変わらず動きも力も超人的、一体何をしたらこんな体になるのだ。
リオにも見習わせたいものね、とあまり運動しない弟を思いこっそり息を吐いた。
「みんなはどうしてるかな」
剣を鞘におさめ、周りを見渡したイアン。
あまり周囲に人はいないが、他のペアたちはどこにいるのだろうか。
彼に倣い、ロゼもぐるりと周りを眺めた。
と、森に目を向けたところで、ピタリとその動きが止まる。
ざわざわ、と風に青々とした木々が揺れる中、微かに届いた声。
―――…くるしい…
「…え」
「ん?ロゼ?」
イアンが不思議そうに振り返ったのがわかったが、ロゼの目は森に釘づけだった。
今、確かに。
―――…苦しい…!
「…!」
声が、する。
はっきりとそれが聴こえたその瞬間、ロゼは一気に駆け出した。