竜の唄
ハッ、と声がした方を振り返る。
イアンとカルマがいる鍛錬場の一角、その壁際に設置されたベンチに、いつのまにか鳶色の髪の男が顎に手を当てて座っていた。
その男性を見た瞬間、二人の目がわかりやすく輝きだす。
「リアス先生!!!」
「おうおう、イアンよ、そんな嬉っしそうに…。照れるだろ」
男性、騎士学部の教師リアスは、駆け寄ってきた教え子に苦笑して顎から膝へ手をやった。
カルマも槍を下ろし、その場で待機しながらリアスを爛々とした目で見つめる。
「ほんとにお前は、動くの好きだよなあ。勉強にもその情熱を持ってくれりゃあいいのによ」
「先生、先生も手合せしてくれよ!」
「聞けよ。いやあ、俺もうヘトヘトだから無理だわ。若いのでやってくれ」
「えー!カルマだってやってほしいって!なあカルマ!!」
「おう!!頼んますリアス先生!!!」
二人にせがまれ、満更でもなかったのか、少しにやけながらリアスは手をひらひら振った。
その仕草にイアンもカルマも、残念そうな顔をする。
「あのなあ、お前らの相手したら、それこそここにいる全員の相手頼まれるだろ。そんな体力おっさんにはねえよ」
そう言われて周りを見てみると、鍛錬場にちらほらいた生徒がみんなこちらを見ていた。
イアンとカルマの手合せからずっと見ていたのだが、それを夢中だった二人が知るはずもない。