竜の唄
「えー…。じゃあ今度!」
「おいイアン、お前はまだ授業でやってもらえるからいいだろうよ! 問題は俺だ!! 先生の担当と学年が違うんだからよ!!」
「知らねえよ! カルマが一年遅く生まれりゃよかったんだろ!!」
「おいお前らやめろ、ガキか」
ぎゃあぎゃあみっともなく喚いていた二人だったが、この制止一言で途端にぴたりと大人しくなった。
バツが悪そうにするカルマと、むすっと顔をしかめるイアン。
そのままの顔でイアンはリアスに向き直った。
「また自主練してるの眺めに来たのか先生?」
「んー?そうだな。ヒマだったから。意外と人が多かったのが誤算だ」
「みんな先生がたまに現れるって知ってるからな」
あわよくば有名教師の教鞭の恩恵を受けれる、というわけだ。
試験や課題が少ない今、それを狙う生徒は多い。
「ま、手合せは今度な。それよかお前ら全員そろそろ戻れ。もう施錠時間だぞ」
「えっ、あ、本当だ」
「せいぜいあとはお勉強するんだな!!」
はっはっは、と高らかに笑うリアスに、イアンは苦い顔をしてしぶしぶ剣を鞘に収めた。
さあ帰った帰った、と急かす教師に従い、生徒たちはぞろぞろと、いささか残念そうに帰っていく。
全員帰ったのを見送り、ふう、と腰に手を当てたリアスは、扉まで歩いていき、ガラガラと重いそれを閉めるとベンチを振り返ってにやりと笑った。