中距離恋愛
ヘッドフォンを外して挨拶を返す。
だけどやっぱり真都は、目を合わせてくれない。
あたしが気づかなかったせいか、
自転車を降りてくれているだけいいと思うべきなんだろう。
「さすがに今日は気づいたんだね?」
「…まあ、昨日見たし」
「よかった。またスルーされたら泣いてたよ、あたし」
茶化して言うけど、いつもみたいなツッコミは無い。
「…カーデ、暑くないのかよ」
「あー…まあ、少しね。だから今日は腕捲ってみた」
「そう」と言ったきり、真都は黙ってしまう。
「…何で、急に」
「え?」
「……」