きみと泳ぐ、夏色の明日
1M  夏のはじまりはいつも憂鬱


――ピピィィ。


むせかえるように暑い夏。まるで高音質のスピーカーのように蝉の大合唱が耳もとで響く。

ジリジリと照りつける太陽、鉄板のように焼けるコンクリート。そのすべてが私の頭をさらに痛くする。

パシャッ!という水音と一緒に鳴るホイッスル。私はそんな様子をプールの片隅で見つめていた。


「間宮(まみや)。お前また見学か?」

暫くして木陰で膝を抱える私に体育の長沼(ながぬま)先生が呆れた顔で近づいてきた。


「……あの日なんで」

私がそう答えるとすぐに反論が返ってくる。


「お前毎回その理由でプールの授業見学じゃないか。こんなことが続くと体育の成績1にするからな」

暑いのに、より暑苦しい説教がまだ続く。


「思春期の女子がプールを嫌がるのも分かるけど、みんな楽しそうにやってるだろ?ほら」

「………」

指さす方向には自由に泳ぐ同じクラスの生徒たち。ゆらゆらと揺れる水面を見つめているとまるで乗り物酔いのように気分が悪くなる。


「……私、そんな理由で見学してるわけじゃないんですけど」


思春期?水着になるのが恥ずかしいって?

むしろそれで見学してると思われてるほうが恥ずかしい。


「じゃあ、なんで授業に参加しないんだ?」

「……私は……」


――と、その時。バシャーン!!と大きな音とともに大量の水しぶきが空から降ってきた。水の気泡はスローモーションのように形を変えて、それはすべて私の体にかかった。

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