きみと泳ぐ、夏色の明日
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「ただいま」
学校が終わり家に着くと、すぐに晩ごはんのいい匂いがしてきた。
「おかえり、すず」
台所に立つお母さんはエプロン姿で、どうやらカレーを作ってるみたい。
「今日仕事だったんでしょ?晩ごはんぐらい私が作るのに」
いつもそう言うけど、実際に料理はあまり得意じゃない。それを知ってるお母さんはパートがある日も家事をおろそかにすることはない。
「今日お父さん遅いんだって。だから先に食べよう」
テーブルに出されたカレーとサラダ。私はいつも座っている定位置に腰を下ろした。
椅子は四脚。お父さんとお母さんと私。
そしてもうひとつは4年前から空席のまま。
「ねえ、お母さん」
「ん?」
真向かいに座るお母さんに問いかけたけど、喉が詰まって言葉がうまく出てこない。
「ううん。なんでもない」
カレーと一緒に言いたいことを飲みこんだ。
他の人から見ればごく普通の家庭でとても幸せな家族。
だけどこの光景が幸せであればあるほど、私は苦しい。