きみと泳ぐ、夏色の明日


正直、痛さは多少あった。

でもそれよりもせっかくの時間を無駄にしたくないって気持ちのほうが上だ。だって一年に1回しか来れない川だよ?遊ばないでどうするのって感じ。


「すずは今日泳ぐのはやめなさい」

バーベキューをお腹いっぱいに食べ終わった時、お父さんにそう言われた。


パーカーの下にはスイミングスクールで使っている水着をしっかりと着用しているし、泳ぐ気満々なのが分かったらしい。

「そうよ。足を痛めてるんだし遊ぶなら浅瀬にしなさい」とお母さんもそれに賛同する。


「えーイヤだ」

私は口を尖らせて首を降った。

浅瀬で遊んでる子はみんな小学生以下の子ばかりで、バシャバシャと手や足を水に浸ける程度。


「今日は午後から天気が悪くなるって言ってたし、いつもより川の流れが早いって釣りをしていた人が言ってただろ?」

そんなの聞いてないし、私から見た川は穏やかでみんな深い場所で普通に遊んでいる。


「じゃあ、1回だけあそこから飛び降りてきてもいい?」

そう指さしたのは大きな岩場が重なっている場所。

あそこはダイブするのに絶好の高さで、今も小学生の子や私と同い年ぐらいの子たちが順番待ちをしている。


「はあ……。わかった。1回だけだよ。終わったらちゃんと浅瀬に戻ってきなさい」

「はーい」

私の返事はやけに軽かった。

< 107 / 164 >

この作品をシェア

pagetop