きみと泳ぐ、夏色の明日


私たちより明らかに小さい子たちも飛びこんだり、深い場所でも余裕で泳いでるんだから、浅瀬で遊んでたら逆になにしにきたの?って笑われるよ。


「お父さんたちもどうせ見てないしさ。ほら」

パラソルを指さすと仲よくなった釣りの人と楽しく談笑しながらクーラーボックスを覗いている。


「怒られたら戻るからさ。だからもう1回飛び降りようよ」

そう言って海斗の腕を引っ張った。

結局、もう1回を繰り返してダイブしたのは4回。順番待ちが少し面倒くさいけど、それでも飛びこむたびに気持ちがスカッとした。


「ねえ、海斗。クマの岩まで競争しよう」

私は離れた場所にある岩場を示した。

あの岩の形が横向きのクマに似てることから、クマの岩とみんな呼んでいる。


「競争?」

その単語に海斗が食いついた。

そう言えば海斗が燃えるってことも知ってるし、普段の泳ぎを他の人に見せつけることもできる。

みんな泳ぎらしい泳ぎなんてしてないから、海斗のクロールを見たらビックリするよ。


「タッチしたらゴール。なんならなにか賭けてもいいよ」

私も大会に出るほどじゃないけど泳ぎなら自信があるし、そもそも海斗にばた足から教えたのは私だよ。


「わかった。いいよ」

海斗が本気の顔になった。  

< 109 / 164 >

この作品をシェア

pagetop