きみと泳ぐ、夏色の明日
晩ごはんを食べ終わり2階に上がった。薄暗い中、自分の部屋の前で足は止まる。
隣を見ると私の部屋と並んでもうひとつの部屋がある。
あれからあの部屋には一度も入っていない。
お母さんはどうなのかな。たまに掃除とかしてたりして?
分からない。だってうちには口にしてはいけないタブーがあるから。
それを作ったのは私。
幸せな家庭に見えるけれど、心の奥底はきっと違う。
私もお母さんもお父さんも。
「はあ……」
逃げるように自分の部屋に入るとすぐベッドに飛びこんだ。
右手を天井に掲げて、再びため息をつく。
キラキラ光る水面の波に激しい水音。そして伸びてくる手。
何度も何度も繰り返し思い出して。
何度も何度も後悔する。
どうして私はあの時、手を伸ばしてしまったのかって。
どうして差し出された手を迷わず握ってしまったんだろうって。
そうしなければ私だった。
ここにいないのは私だったのに。
――ごめんね。海斗(かいと)