きみと泳ぐ、夏色の明日


水遊びをしていた人たちはみんな陸へと上がって、帰る準備をし始めている。


「流れも早くなってきたし、戻ったほうがいいよ」

たしかに言われてみれば流れが早いように感じる。でもここは海じゃなくて川だ。

流されても泳ぎきれる距離だし、深さだって大したことはない。


「あ、向こうの岩まで逆流だから不安なんでしょ?」

さっきは抵抗なく泳げたけれど、スタートした岩に戻るには流れに逆らって泳がなければいけない。


「じゃあ、海斗はそこにいれば。私は戻って海斗は勝負を放棄したってことで負けだからね」

わざと煽るような言い方をした。


と、その時。

「すずー!」「海斗ー!」とお母さんたちが呼んでいるのが聞こえた。

長く遊んでるのがバレた?それとも天気が変わったから帰る準備?どっちにしても時間がない。


「もうスタートするよ。よーい」

海斗の気持ちも聞かずに私は勝手に競争する体勢になった。


「え、ね、姉ちゃん?」

「どんっ!!」

今度は滑らずに岩を蹴ることができて、スムーズに蹴伸びをすることに成功。


バシャバシャとクロールをしていると、横で同じような音がしてきたから、海斗もどうやらスタートしたようだ。

海斗は私に似て負けず嫌いだから、絶対に追ってくると思ったけど。

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