きみと泳ぐ、夏色の明日
スタートは上手くいった。手も足もちゃんと伸びていて、いつもどおりの泳ぎはちゃんとできている。
それなのに前に進んでる気がしない。
……逆流だから?
流れが早いといっても余裕で歩けちゃうレベルだし、赤ちゃんじゃないんだから体が持っていかれることはないって思ってた。
だけど浮いた状態で泳いでいると、まっすぐ進んでるはずなのに体が流される。
こんなに25メートルって長かった?
さっきはあっという間だったのに。
息継ぎを必死でやっても水面が揺れていて水が口の中に入る。
苦しい。息がもたない。
そう思って泳ぐのを止めようとした瞬間、ズキッと左足に痛みが走った。
……急になんで?
水の抵抗に耐えられなくなったのか、ムリをしすぎたのか足に力が入らない。
……ブクッ。
水中の中で気泡ができた。
〝溺れる〟
頭を過った言葉。
怖くなってジタバタとすると余計に体が流れに飲まれて、うまく浮くこともできない。
足が着かない。
ここは海じゃないんだし所詮は川。
深い場所といっても底は見えるし、泳ぎには自信があるから大丈夫、なんて考えはすぐに消えていった。
「……っ……」
完全にパニックになった私は泳ぎ方も忘れて、バタバタともがくだけ。
怖い、怖い、怖い。
溺れる恐怖、息ができない恐怖、死ぬかもしれない恐怖。