きみと泳ぐ、夏色の明日


そのあと図書室に向かって本を返し終わったあと、やけに校内が静かで窓から見えるグラウンドにも誰もいない。

こんな静かな学校ってはじめてかも……なんて思いながら、頭の片隅では須賀のことを考えていた。


たしか教室にカバンはあった。だから帰っていないはず。

なんとなく屋上に行ってみたけれど、鍵が閉められていて開けることもできなかった。

ということは……。

ひとつの可能性。

いや、100パーセント須賀はあの場所にいる。


キィィとその場所の扉を開けて裸足になった。

どうして来てしまったのか自分でもわからない。

一番遠ざけたいもののはずなのに、どこか懐かしく感じてしまうのはなぜだろう。


「なにしてるの?」

部活動をしていないはずの室内で、唯一音が聞こえた場所。私はそこのドアを開けるとやっぱり中には須賀がいた。


「なにって……筋トレ?」

「まだダメだって!」

「下半身なら平気だよ」

須賀がいたのは水泳部のトレーニングルーム。
しかも足に重りを付けている。


「なにやってんの。悪化したらどうするの……」

須賀のことだからどうせ家でも筋トレしてそうだけどさ。


「んで、なんで間宮がここに?」

「え?ああ、たまたま……?」

「ふーん」

私もなんで須賀を捜しにきてしまったのか教えてほしい。


「まあ、丁度よかった。サポーター取れちゃってさ」

そう笑顔で言う須賀の横には長い布。

あの事故から1週間が過ぎて腕を固定しなくてよくなった須賀は肩にサポーターの白い布だけを巻いている。

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