きみと泳ぐ、夏色の明日

***


夏休みはとくにやることもなく、かといって家にいてももどかしい気持ちになるばかりで、私は昼食を買いにコンビニに出掛けた。

一時(いっとき)気温は落ち着いて、セミも見かけなくなったと思ったのにまた復活して大合唱。

たしかセミは7日で力尽きるんだっけ。

逆に羨ましいよ。


だって自分たちの終わりを知ってるから大声で鳴くんでしょ?人間は終わりなんて分からない。

だから伝えたいことも言えないまま、二度と会えない人になる。


「あれ、すずちゃんだ」

コンビニに着く寸前で前から誰かが歩いてきた。

赤いジャージはすごく目立っていて胸には有由校のマーク。


「……圭吾くん」

「俺は部活帰り。今日は午前中だけだったからさ。すずちゃんは?」

まさか知り合いに会うとは思わなかったから、すごい適当な服装プラス髪の毛もボサボサのまま来ちゃった。


「私はそこのコンビニに……」

「もしかして昼食まだ?よかったら一緒に食べにいかない?」

え?この展開は想像してなかった。

お腹は空いてるしコンビニのお弁当が食べたいわけじゃない。でもこんな格好じゃ……。


「ダメ?」

「うう……」

そんな顔されたらダメとは言えなかった。

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