きみと泳ぐ、夏色の明日

タイミングがいいのか悪いのか、店員がちょうどパスタをテーブルに運んできた。

フォークはまだお互いに触らないまま。


「えっと……」

それは一体どういう意味?友達として?

でも有由高とは一応ライバルだし、クラスメイトと会った時の私の立場が……。


「個人的にすずちゃんには俺の応援をしてほしい」

アイスティーの氷が溶けていく。私はそれをごまかすようにパスタを口に入れた。

「い、行けるかな。予定がまだちょっと分からなくて」なんて、自然と早口になってしまう。


個人的に?圭吾くんを?

まだ頭の整理が追いつかない。


すると、圭吾くんもパスタを食べはじめて少しほっとしていると、また口が動く。


「恭平ケガしたんだってね」

他校でもすぐに噂は広まってしまう。

あ、もしかしてさっきの言葉って須賀が大会に出ないと思ってるのかな?だから応援にきてってこと?


「須賀はケガをしたけど大会には出るって……」

「うん。知ってるよ」

また私の頭はハテナマークだらけ。


「恭平は出るよ。なにがなんでも。本調子じゃなくてもね」

その言葉になぜか私の眉がピクリと動く。


「……須賀はきっと本調子で出るよ。なにがなんでも」

私が言うセリフではないけど。

須賀は中途半端になるって分かってて出場を決めたわけじゃない。

今まで積み重ねてきたものが結果になると信じてるだけ。

才能がないのなら須賀は努力の天才だ。
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