きみと泳ぐ、夏色の明日
脱線してしまったけど、やっと紗香たちに追いついた。
だけどなにやら様子がおかしい。
「どうしたの?」
少し段差のある場所で紗香が座りこんでいた。
「いや、辻井さん足が痛いって……」
「え?」
山口くんの言葉に私は慌てて駆け寄った。
紗香が履いていた下駄の帯が血で滲んでいて、親指と人差し指の間が擦れてしまったのか皮が剥けていた。
「だ、大丈夫?いつから?」
ここまで血が出るってことは相当我慢してたんだと思う。
「最初は平気だったんだけど徐々に。人混みで必死に歩いてたらこんな風になっちゃって……」
紗香の瞳が潤んでいた。
もしかして男子たちの歩幅に合わせた歩き方をしたから?
……もう少し早く気づいてあげればよかった。これじゃ痛くて歩けないよ。
「気づけなくてごめんね。私、絆創膏ないんだけど紗香持ってる?」
紗香が横に首を振ったのを確認して、私は立ち上がった。
「私、医務室に行ってくるから」
場所は分からないけどお祭り会場なら絶対にあるはず。
これ以上ムリして歩かせたくないし、帯が当たる部分に絆創膏を何枚か重ねれば多少、痛さも和らぐはず。
すると、ずっと立って見ていた他クラスの男子がぽつりと呟く。
「それって俺ら待ってなきゃダメなの?」
「え?」