きみと泳ぐ、夏色の明日


面倒くさいって顔。

山口くんは膝を付いてペットボトルの水で冷やしたりしてくれてるのに、この人はなんなの?


「いや、もうすぐ花火はじまるしさ。ここにいても見れないっていうか……」

「おい」

須賀が注意しようとしたけれど止まらない。


「そもそもこんな場所で慣れないものを履いてきちゃダメでしょ。可愛く見せたいのはわかるけど下駄なんて歩きづらいし、こうなるってはじめから……」

「ちょっと!」

ずっと我慢して聞いていたけど限界だ。


「一緒に回ろうって言ってきたのはそっちでしょ?女の子の歩幅も知らないでスタスタと歩くスピードに紗香は我慢して付いていったんだよ」

「え、じゃあ俺らが悪いの?」

「………」

そうじゃないけど、普通は大丈夫?とかそういう言葉がでてきてもいいんじゃないかってこと。

紗香がせっかく可愛く浴衣を着てきたのに、それが身勝手な理由で否定されたのが悔しかった。


「もう。いいよ。行こう紗香」

私は言い返す気力もなくて、紗香の腕を引いた。


「痛いけどもう少し我慢して。向こうにベンチがあったからそこまで行こう」

ここにいるよりはマシだ。

< 130 / 164 >

この作品をシェア

pagetop