きみと泳ぐ、夏色の明日


それからなんとか紗香をベンチに座らせることに成功した。


「すずごめんね。私のせいで……」

「紗香が謝らなくていいよ」

ここは人気が少ないし出店からも離れてるから、紗香も人目を気にしないで済む。


……今度から絆創膏ぐらいカバンに入れておこう。

自分のためじゃなく友達のために使う時があると思うから。


「ちょっと医務室に行ってくるから待っててね」

私はダッシュして走った。

スニーカーだから気にせず走れるし、医務室まで距離があるけどこれなら余裕だ。


人の波は私とは逆方向で、どうやら向こうで花火が打ち上げるらしい。みんな見えやすいスポットに移動してるけど、今は花火よりも大事なものがある。

医務室に着いた私は絆創膏とガーゼをもらって、来た道をまた戻った。


「――間宮!」

その途中で、須賀がこっちに向かって走ってきた。


「さっきは、そのごめんな。今辻井のところにも行ってきた」

手には冷えたペットボトル。そのひとつをお詫びみたいに私に渡す。


……だから須賀は謝らなくていいってば。

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