きみと泳ぐ、夏色の明日


「私こそごめん。雰囲気わるくしたよね」

そのあとの須賀たちのことなんて考えずに。


もっと私が器用だったらだれも不快にすることはなくあの場を乗りきれたかもしれない。

現に私が怒ったことで紗香が余計に気にしてしまった。

いつも頭に血がのぼると言いたいことを言ってしまって、あとで〝ああ……〟とひとりで落ちこむこともある。


「いや、間宮は間違ってねーよ。普通にあれはアイツがわるいだろ」

「そうだけど……」

「それに俺、間宮のそういうところ……」

なぜか須賀の言葉が詰まる。


……な、なに。この沈黙。

言いかけたことを須賀は言わずにニコリとただ笑うだけ。


「じゃあ、俺行くわ。絆創膏、辻井に届けなきゃだろ?」

「う、うん……」

胸がドキドキするのは走ったから。

必死で走ったせいだ。

須賀が立ち去る寸前、なにかを思い出したようにこっちを振り返る。


「似合ってるよ、それ」

それと指をさしたのは私のヘアピン。

走り去る須賀の後ろ姿を見ながら、私は心が熱い理由をずっとずっと考えていた。

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