きみと泳ぐ、夏色の明日
13M きみと夏の真ん中で
***
――ピピッピピッ。
枕元で鳴る目覚まし時計。
それをカチッと止めて、私はカーテンに手を伸ばした。
8月の中旬。
今日は今年一番の最高気温になると天気予報で言っていた。
ジリジリとコンクリートを照りつけている太陽を見て、ため息ではなく笑みがこぼれる。
今日は絶好の水泳日和だね。
暑ければ暑いほど燃える人たちが集まる場所。
今季最後の熱い戦いがはじまろうとしている。
『あ、紗香?うん。起きたよ』
スマホを耳にあてながら金魚たちにエサをあげて。ショートパンツにTシャツ。そして黒のリュックを背負った。
……あ!
再び私は鏡の前に戻ってあのヘアピンを前髪につける。
危ない危ない。忘れるところだった。
「すず~?お父さん駅まで送ってくれるって」
「本当?」
階段下でお母さんが私を呼んでいて急いで1階へ降りると、すでに車の鍵を持ったお父さんが玄関で待っていた。
「支度は終わったのか?」
「うん!」
歩きやすいスニーカーを慌てて履いていると、後ろからお母さんになにかを渡された。
「熱中症になったら大変だから被っていきなさい」
「えー。いいよ帽子は。だって似合わないし」
「いいから!」
無理やり被せられた白のキャップ。私は文句を言いつつも笑顔でそのまま「いってきまーす!」と家を出た。