きみと泳ぐ、夏色の明日


それから私はロビーに戻るとそこには先生もクラスメイトたちも紗香もいない。

……あれ?

もしかして場所を移動したのかな、なんて思いながらスマホを触ると紗香からメールが届いていた。


【みんなで先に帰るからねー!駅前のファミレスで打ち上げやるらしいから、あとで須賀とおいでよ。ちなみに先生のおごり】

可愛い絵文字つきの文。

本人がいないのに勝手に打ち上げをはじめちゃうところがうちのクラスらしいというか、なんていうか……。

でもきっと、気を遣ってくれたんだって分かる。


会場からはジャージを着た選手たちが続々と出てくるのに、須賀はなかなか現れない。

しばらくロビーで待っていたけど、スタッフの人に一般客は外に出るように言われてしまったから、私は外で待つことにした。


空は青空と夕空のちょうど半分。

暑い熱風が吹いたと思えば、爽やかな涼風も通り抜けて。

季節もゆっくりと変わろうとしている。


会場の外観に飾られていた旗がピタリと止まった時、私の場所が影になった。

そのコンクリートに映る髪型や背格好で、もう須賀だってわかる。


「よう」

「うん」

こんな時でさえいつもどおりだから笑っちゃう。

私の影と須賀の影が向かい合って、私の背中を押すように大きな風が吹いた。

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