きみと泳ぐ、夏色の明日
須賀はゆっくり水の中に入って、見えやすいように真ん中の第4コースに立った。
そしてスタート台を掴んでそのまま背中で着水して泳ぎはじめた。バジャバジャッと円を描くように須賀の腕が水しぶきをあげる。
太陽の日差しがまるでダイヤモンドのように水面に浮かんでいて、その中で泳ぐ須賀と一体化しているようにキラキラしていた。
その波を見つめていたら、急に頭がクラッとして。
……そういえば昨日またあの夢を見て、寝不足だったんだっけ。
暑さのせいで食欲はないし、朝ごはんも食べられなかったし。
ああ、夏って本当に良いことがなにもない。
「すず、顔が真っ青だよ」
私の異変に気づいたのは紗香だった。
貧血なんて可愛い女の子みたいで〝らしくない〟けど、こんな鉄板みたいなコンクリートの上で倒れたくはない。
それにまた誰かにに助けられるのはイヤだ。
「ちょっと保健室で休んでくる。先生にあとで伝えておいてくれる?」
「うん。それはいいけど……ひとりで平気?一緒に行こうか?」
「大丈夫。ありがとう」
先生もクラスメイトも須賀の泳ぎに夢中の間に、私は静かにプールサイドから離脱した。