きみと泳ぐ、夏色の明日
私はいつからこんなに弱くなってしまったんだろう。
虚勢を張り続けていても、体がついていかない。
「大丈夫?」
フラフラとした足取りで階段を降りて、校舎の中に入る手前で誰かに肩を支えられた。
ビックリして振り向くと、そこには見覚えのない男子がひとり。
「あ、ごめん。足取りが不安定だったからつい。具合がわるいの?」
「いえ……」
その手が私から離れると、男子は心配そうな顔で私を見た。
色素が薄い茶色い髪の毛に、私より頭ひとつぶん高い背丈。触られた瞬間にすごくいい匂いがして、余計に頭がクラクラする。
胸には〝有由原西高等学校〟の文字。
有由原西(あゆはらにし)って確か隣町の高校だったはず。なんでこんなところに……。
「あ、そういえば水泳部ってどこにあるか知ってる?」
「……えっと、ここをまっすぐ行って、野球部のグラウンドが見えてくるのでその正面の建物です」
「そっか。ありがとう。足元気をつけてね」
その人は爽やかな笑顔で水泳部があるほうへと歩いていった。