きみと泳ぐ、夏色の明日
ウォーミングアップの泳ぎ方は自由だけど、森谷圭吾は須賀と同じでクロールだった。
水の掻き方や息継ぎまで本当に教科書に載れそうなほど無駄がないというか……ちょっとビックリした。
「あーなんで写メ禁止なの!森谷くんの泳ぎなんて間近で見られるチャンスなんてないのに」
「ねー。もう切り取って部屋に飾りたいくらいカッコよすぎるよ……」
女子たちは泳ぎというよりは森谷圭吾本人にしか興味がないみたいだけど。
でも騒がれるのもムリはない気がする。
あの甘い容姿にギャップがある筋肉質の体。しかもサービス精神旺盛で泳ぎも完璧なんて、騒がれないわけがない。
そして、女子たちが興奮するたびに須賀は益々不機嫌に。
まあ、普段なら森谷圭吾のポジションに須賀がいるわけだし。みんな手のひらを返したように人気を全部取られたら、そりゃ気に食わないよね。
「はいはい。これから本格的に練習はじめるから見学はここまで。解散解散ー」
長谷川先生はそう言って女子たちをグイグイと玄関口のほうへと押し出す。「えー!」という不満も聞かずにあっという間に外へと出されてしまった。
その間でも森谷圭吾は笑顔で、こちらに向かって手を振る余裕まで見せる。
ふらついてた所を助けてもらったけど……森谷圭吾ってなんか女子の扱いに慣れてそうで苦手だな。
あの笑顔もなんとなく胡散臭いし。