きみと泳ぐ、夏色の明日



高校二年生になって3か月。クラス替えしたこの教室にはまだ慣れない。

友達作りは苦手なほうだし、人好き合いも下手くそ。

唯一の救いは紗香と同じクラスになれたことぐらい。


「ほら」

自分の席に着くと突然冷たい何かが頬をかすめた。

そこには冷えたジュースを差し出す須賀の姿。


「……なに?」


とっさに不機嫌な態度をとってしまった。

濡れている髪。小麦色に焼けた肌。そして須賀からは独特のプールの匂いがした。


「さっきのお詫び。怒ってんだろ?」

教室にいるクラスメイトが私たちのやり取りを興味ありげに見つめている。


「……いいよ。別に。ジャージならもう乾いたから」

注目されるのは好きじゃない。特に須賀は目立つから用事以外の会話は避けたかった。


「いや、明らかに怒ってんじゃん。いいから受けとれって」


……私が怒ってる?なにに対して?


「いいって。それに炭酸は飲まないから」

私は須賀から逃げるように席を離れた。それと同時に聞こえてきたクラスメイトのひそひそ声。


「須賀かわいそー。あんな言い方しなくても」

「ね。機嫌が悪いからってそれはないよね」


私がその方向を睨み付けると女子たちはとっさに目を反らした。


「すず、授業は?」

紗香の問いかけに私はサボると言って、そのまま教室を出た。

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